スタッカート奏法──「はねる」ではなく「短く」弾く
ピアノを習っていると必ず出てくる「スタッカート」。多くの生徒さんが「スタッカート=はねる」と理解してしまいがちです。しかし、実際は「はねる」のではなく、「音を短くする」意味です。では、どうすれば美しく効果的なスタッカートが弾けるのでしょうか? 今日はスタッカート奏法について詳しく解説します。
スタッカートの本当の意味
スタッカート(staccato)は、イタリア語で「切り離す」という意味を持ちます。これは「音と音の間に隙間を作る」奏法であり、音を短くすることが目的です。
よく「はねる」と表現されることがありますが、それが誤解のもとになりがちです。むやみに手を跳ね上げると、音が雑になったり、テンポが乱れたりすることがあります。大切なのは、「次の音へのつなぎを意識しながら、音を短く切る」ことです。
スタッカートにはさまざまな種類がありますが、私自身、今でも苦手に感じるものがあり、練習が必要だと感じることがあります。
スタッカートの練習方法
- まずはレガートで弾く
スタッカートの前に、そのフレーズを レガート で弾いてみましょう。なぜなら、レガートで弾くことで メロディーラインをしっかり把握できる からです。
- まず、スタッカートをつけずに、なめらかに弾く。
- そのフレーズがどのように流れるのかを耳で確認する。
- 音楽的な方向性を考えながら、レガートでの演奏を完成させる。
このプロセスを飛ばしてしまうと、スタッカートをつけた時に フレーズの流れがぎこちなくなる ことがあるので要注意です。
- レガートの感覚を残しながらスタッカート
次に、レガートで弾いたのと 同じフレーズ感を保ったまま スタッカートに変えていきます。
- 音の長さを短くするだけで、フレーズ全体の流れはレガートの時と同じように保つ。
- ただ切るのではなく、 音楽的なつながり を意識する。
- 指先を意識しながら、軽やかに鍵盤から指を離す。
この練習によって、スタッカートが単なる「短い音」ではなく、 フレーズの一部として自然に響く ようになります。この方法に慣れると、フレーズをスタッカートで弾くことへの違和感がなくなり、音楽的な表現の幅が広がります。
- 手の形を作り、弾き方を工夫する
スタッカートの弾き方にはいくつかの方法があります。曲のスタイルや時代によって使い分けるのが理想的です。
- 指先で弾くスタッカート(モーツァルト、ハイドンなど)
- 指の力を使って、鍵盤を軽く押し、すぐに離す。
- 手首や腕の動きは最小限にする。
- 手首を使ったスタッカート(ショパン、リストなど)
- 手首を柔らかく使い、鍵盤を軽くタッチして離す。
- 特に和音のスタッカートや跳躍の多いフレーズで有効。
- 腕全体を使ったスタッカート(ベートーヴェン、プロコフィエフなど)
- 腕の重みを利用し、力強いスタッカートを作る。
- 迫力が必要な楽曲でよく用いられる。
演奏する曲によって、どの奏法が適しているかを考えながら練習すると、表現の幅が広がります。
スタッカートを美しく弾くためのコツ
- 力を入れすぎない
→ スタッカートだからといって、無理に力を入れると疲れやすくなり、音も硬くなってしまいます。 - 音の立ち上がりを意識する
→ 鍵盤にしっかり触れてから弾くと、音の輪郭がはっきりし、クリアなスタッカートになります。 - 脱力を忘れない
→ 指や手首に無駄な力が入らないようにすることで、軽やかで美しいスタッカートを実現できます。
こうしたポイントを意識すると、スタッカートの演奏がより音楽的で洗練されたものになります。ぜひ、普段の練習に取り入れてみてください!
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